<< ごぶさたっす | main | カオサンロードに行くぜ〜!! >>

スタートリガー9

 Danteは親友や。
 フランスにいた頃にもそう思ってた奴はおったけど、それよりも大事な親友やと思ってる。そもそもジャメルは不良仲間って感じやったし、ホンマに友達かって言われたら違うかもしれへん。つるんでただけな気もする。
 Danteは違う。
 俺の事、多分この世で一番よぅ分かってくれる親友や。
 初めて人を殺した時、取り乱して帰れへんかった俺のそばに一晩中いてくれた。仕事がつらくなると、よくプリンパーティして笑わせてくれた。忙しすぎてぶっ倒れた時は、支部長に直談判して仕事の量を半分まで減らしてくれた。
 一番の親友なんは確かや。
 でも、俺はそんなDanteの事を全く知らんかったんやと気が付いた。
 Danteが捨てられた事、支部で働いてる理由、なんであんなに悪趣味なんかも、俺は知らんかった。それでも、親友やと思ってた。だからどうでもよかったんよ。
 でも、俺は立ち尽くしたまま、どうしていいかも分からんとDanteを見下ろしてた。
 なんて言っていいかも分からんかったんよ。
 Mirandaは静かに俺と支部長を見つめながら、引き金に指を掛けた。
 この女がずば抜けていい腕のスナイパーなんは知ってる。一キロ先の人間の頭をやろうと思えば吹っ飛ばせる腕の持ち主や。点にしか見えへん的の真ん中をいたって普通のベレッタで打ち抜くんやもん。そんな女に勝てる筈がない。俺なんか、たったの十メートルでも的に当たらん時あるんやから。
 そんな俺に向かって、Mirandaは笑った。
「銃、捨ててくれる? こんな近距離で当てても面白くないから見逃したってもええで」
 ムカッとしたけど、ここで刺激したらマジで撃たれる。黙って睨み返すのが精々やった。いくら防弾チョッキ着てても、頭撃たれたら意味ないもん。この距離やったら、絶対当てるでこの女。
 Mirandaの仲間がやっと追いついてきた。
 三つの銃口を向けられて、俺はどうする事も出来ひんかった。今までもヤバい経験はしてきたけど、こんなん初めてやもん。無理に決まっとるやろ。
 Mirandaは支部長と俺が身動き出来ひんのを見て、スタスタとDanteに近づいてくる。いつもは美人で成長したらええ女になりそうなMirandaも、今は完全に工作員の冷酷な顔をしてた。最近Danteが遊んでたゲームに出てくるやったらセクシーな魔女みたいや。あれ、なんてゲームやったか忘れたけど。
 MirandaはDanteを見下ろして囁く。
「うちらやったら仲間を捨てたりせぇへんよ。一緒においで」
 その言葉を聞いてなんか知らんけど、キレた支部長があの巨大なマシンガンを撃った。一瞬で俺らを狙ってた連中が真っ赤な血を流して倒れる。そんで、それをあっけにとられて見てた俺が振り向いた時には、支部長がMirandaの腕を引っ掴み投げ飛ばしとった。これまたキレーに決まってたもんやから、思わず拍手しとなったで。お手本みたいやったもん。
「Dante、聞きなさい」
 支部長はMirandaにとどめは刺す訳でもなく、真っ直ぐDanteに駆け寄って行って優しく抱き寄せる。
「お前、まだ私が信用出来ないのか? 今まで私がDanteを見捨てた事が一度でもあったのか?」
 ちょっと厳しいけど、しっかりした声で支部長は続けた。
「前にも言っただろ? お前はうちのバカ息子だよ」
 そして最後にDanteの頭を小突いて、さあ行こうと笑って立ち上がる。
 まだ鼻水をすすってはいたけど、Danteはちゃんと立ち上がった。そんで、ぐちゃぐちゃの顔を支部長のシャツにくっつける。小学生かよとは思ったけど、俺はそれを飲み込んだ。
「ほかのルートは見つかった?」
「多分、そのまま待ってた方がいいと思うよ」
 ゆりはなんや楽しそうに言うた。
「どういう意味?」
 俺がそうマイクに向かっていちゃもんつけようとしたら、上から梯子が降ってきた。それも思いっきり俺の頭に直撃。なんて言うの、これ? 太い縄で出来とる梯子。軽いけど、足掛かりになってる部分は金属製のパイプになっとるから結構痛い。
 俺はぶつけた頭の後ろをさすりながら上を見た。
 黒いヘリコプターに見覚えのある顔がいくつかと、今日車を出してくれたあのおっちゃんがおる。
「支部長、ルノ」
 そう呼ぶ声にホッとして、俺は支部長とDanteに先行ってと促す。
 俺は吹っ飛んだ筈のMirandaを見た。
 てっきり頭でもがっつりぶつけて気絶したかと思ったんやけど、Mirandaはしっかり立ってた。仲間がMirandaに手を貸してた。
 俺はその味方とMirandaに向かって銃を向けた。
 距離は三メートル、これやったら流石の俺も外さへんで。
 でもその仲間の女が顔を上げた瞬間、俺はしっかり握ってた筈のベレッタを落っことした。めっちゃ本気で動揺したんよ。
 ホンマ、アホな事したとは思うで。あの二人にいつ撃たれてもおかしくなかってんから。
 でも俺が動揺しても無理ないと思うんよ。
 だってな、Mirandaの横におった女、ブルネットでちょいアジア系の顔したスタイルだけは抜群の女やったんよ。顔は俺の好みやないで、あの顔やったらまだDanteが女装してる方が可愛げがあると思うもん。少なくとも、自分のパンツくらいちゃんと洗濯出来るDanteのがいい。
 俺はその死んだ筈の顔に向かって呟いた。
「姉ちゃん」
 
 
JUGEMテーマ:小説/詩
| スタートリガー社の工作員達 | 22:41 | comments(0) | trackbacks(0) |

スポンサーサイト

| - | 22:41 | - | - |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
トラックバック